編集事例

インタビュー記事の事例をご紹介します。実際の取材を想定したヒアリングシートと、記事として整形された本文をまとめました。

ヒアリングシートとは、取材前に用意する「質問リスト」のことです。話者の経験や視点を深く掘り下げることで、聞き漏らしを防ぎ、記事全体の構成に役立てます。必ずしもすべての取材現場で使われるものではありませんが、編集実務においては非常に有効な準備ツールです。

本事例では、「アダルト創作におけるペルソナ設定」というテーマに対して、ヒアリングシートを作成しています。

※本文はあくまで事例のご紹介のため、露骨な表現や、話者の情報に関わることは伏せ字に編集させていただいています。

アダルト創作におけるペルソナ設定|読者像を詳細に決めて創作者としての軸を保つ

 

今回お話しするのは、創作をする際の”軸”となり得るお話『ペルソナ』という概念についてです。

『他人の評価を気にせず好きなものを好きなだけつくる』というスタンスは至極素敵なものですが、私は他人の評価も気にしてしまうたちです。創作によってある程度の収益を望んでいるなら、なおさら。私は『好きなものをつくる』と『他人から評価されるものをつくる』を両立させたいと考えています。

そこでポイントになるのは、『その”他人”って具体的に誰?』、言い換えると『誰に向けて作品をつくっているの?』ということ。

ここで『ペルソナ』のお話が出てきます。

ペルソナとは

『ペルソナ』とはマーケティング用語の一つであり、ざっくり言うと『自分の商品(作品)を届けたい“架空の1人の人物像”』のことを言います。

これは『ターゲット』と一緒に考えられがちですが、少し違います。ターゲットとは、『20代男性』『30代女性』のような大まかな”層”のことを言います。しかしペルソナは、性別や年齢はもちろん、ライフスタイルや価値観などのさまざまな要素を設定して、まるで実在するかのような”一人の人物像”を描くものです。

ペルソナという考え方は、ライフスタイルや価値観が多様化した現代のマーケティングにおいて大切な概念になります。大まかな”層”ではなく、“その人”にフォーカスすることで、より深く響く商品設計が可能になるわけです。

私は創作において、この『ペルソナ』を設定しています。

創作におけるペルソナの具体例

細かいことをお話しする前に、まずは私が設定しているペルソナ――読者像をご紹介します。

決まった形はないので、『こんな感じ』程度の認識で大丈夫です。ググってみると、いろいろとテンプレートも出てきます。

名前:コウ(仮)
年齢:24歳
性別:女性
属性:地方生まれ、都市在住の社会人。一人暮らしでパートナーはいない。夜にGoogleやPixiv、DLsiteなどを巡回して、アダルト小説や漫画を読む。男性向け・女性向けは問わない。SNSは見るだけ派。使用デバイスはスマホ。

性経験・性癖:
性に対してオープンではなく、実際の性経験も少ない(男性1~2人程度、女性との経験はなし)。”中”はイった経験に乏しいからあまり好きではない。自慰は”外”派。

現実で満たされた経験が少ないからこそ、現実ではあり得ないような「壊れてしまうぐらいの気持ちよさ」への憧れが強い。あくまでも気持ちよくなりたいだけであり、苦痛を感じたり、辱められたいわけではない。肉体的・精神的・社会的に問題が起きるのも嫌。

作品の読み方は『自己投影』型。『自分もこんな目に遭ってみたい』という作品に惹かれる。

アダルト創作でペルソナを設定する理由

私が創作をする時は、(基本的には)この『コウ(仮)』さんに向けた作品づくりをしています。

そして、その理由。

フェチの細部に焦点を当てるため

同じプレイやシチュエーションでも、描写の仕方次第で読者の満足度が大きく変わります。

たとえば同じ”連続絶頂”を題材にした作品でも、「女性をイカせたい男性」と「男性にイカされたい女性」では、求めるものが違います。漠然と”連続絶頂が好きな人”といった層だけで考えていると、この細部を見落としてしまうことがあります。

地雷を避けるため

私は上記の通り、女性の読者を想定しています。それなのに、例えばこんな描写をしてしまったら……

・女性蔑視的なセリフや描写
・妊娠・性病などのデリケートな話題
・(書き方次第だが)処女、破瓜について

あらかじめ読者像を詳細に設定することで、このような描写を意識的に避けています。

幅を広げつつも創作者としての軸を保つため

私はある程度、いろいろなジャンルの作品をつくりたいタイプです。SkebやPixivリクエストでは、普段書かないような内容のリクエストも頂きます。しかし、あまり好き勝手に手を伸ばしすぎるのも考え物です。

例えば、上の『コウ(仮)』さんに刺さる作品をつくった矢先、次に女性を徹底的に辱めて痛め付けるような作品をつくりでもしたら、『コウ(仮)』さんとしては私をフォローすべきか否か迷うと思います。
(実際はそういう作品は私の好みじゃないので、そこまで極端なことにはなりませんけれども)

作者としての軸を保つことは、評価を安定させることにもつながります。特にスランプに陥った時などは、あれこれと手を出して迷走してしまいそうになりますから。

(『最初からこのジャンルしかつくらない!』という方、あるいは最初から自分の『好き』をとことん突き詰めている方なら、この記事のお話自体が無用かもしれませんね)

ペルソナの設定方法

ペルソナを設定する意味については、ここまでお話しした通り。それでは、『そのペルソナというのは、どうやって決めればいいのか?』というお話です。

ある程度一般論もお話ししますが、あくまでも私の体験ベースでお話しさせてください。

今までのアクセスデータから読者像を推定する

実際、私はある程度作品を出すまで、ペルソナを考えもしていませんでした。

転機になったのは、以下の作品。XXXX年XX月現在でブックマーク数XXXXX弱、合計XXX作品近く公開してなお全体閲覧数のX%近くを占める、私の作品の中で圧倒的エースな小説です。

XXXXXXXXXXXXXXXXXXXX
(作品タイトルとURL)

そのアクセス解析を見てみると、女性比率が9割以上となっていることに気付きます。BL作品が多いPixiv小説というプラットフォームの特性などいろいろな要因があるとはいえ、『男性読者がメインだろう』と思っていた私には意外でした。

また、個人サイトのアクセスデータ(GoogleAnalytics)から、20代~30代が多いことも確認できました。

そこで、ひとまずの読者”層”を『20代~30代の女性』と設定することにしました。

仮説→検証→修正

ここからは何度も試行錯誤して、読者像の細かい部分を詰めていく作業です。

・伸びたのは『XXXX』の作品だった。それでは、”XX”はどうなんだろう?
→XXの作品を書いてみたけれど、あまり伸びなかった。
→『XXは好きではない』と推測。

・現代モノばかり書いているけれど、この路線は正しいのか?
→ファンタジーモノを書いてみたけれど、あまり伸びなかった。
→『読者自身が投影できる世界観のほうがよい』と推測

こんなことを何十作品分か繰り返して、現状出来上がったのが上でご紹介した『コウ(仮)』さんです。

ただし、このペルソナはまだ完璧ではないという認識で、今も仮説→検証→修正を繰り返している最中です。
(たぶん、一生完成しないと思います)

一からペルソナを設定するなら①:性癖ベースで組み立ててみる?

以上が、私のペルソナ設定のやり方です。たぶん、既に創作をされている方なら、同じようなやり方で、その方の読者像が見えてくるんじゃないかなと思います。

あとは簡単に、一からペルソナを設定する方法を考えてみます。『これから初めて創作をする』『今の作風がごちゃごちゃしているから整理したい』などの方のために。

私が思い付くのは二通り。まずは性癖をベースに組み立てる方法。

  1. 自分の性癖をピックアップする
    ex.「XXX」「XX」「XX」「XXXX」
  2. それを読みたいと思う読者像を想像する
    ex.男性。性経験なし、交際経験も少なめ。女性に甘えながら、たくさん気持ちよくされたい。
  3. あとは試行錯誤したり、アクセスデータを見たり
    ex.主人公(男性)が極度に蔑まれる展開は地雷にならないだろうか? 殴る、蹴るなどの苦痛のあるプレイは? 女性が受け身になるプレイは? 主人公以外の男性が女性とプレイする描写は? 女性のリアルすぎる描写は?

一つ一つ試して、読者像の細部を詰めていきます。

一からペルソナを設定するなら②:”あの人”を思い浮かべてみる?

もう一つ思い付く方法は、実在の人物をモデルにすることです。

  • 感想をくれた読者やフォロワー
  • 創作仲間
  • 自分のパートナー
  • 自分自身

など。「この人なら読んでくれるかも」と思える相手を想像してみると、それがペルソナになり得るかもしれません。場合によっては、その人にいろいろお話を聞いてみるのもいいかもしれませんね。

まとめ

ペルソナを意識するようになってから、『幅を広げつつ、だけど軸がブレないように』作品をつくることが多少できるようになったと思います。特に、新しいジャンルに挑戦したいとき、予想に反して作品が伸びなかったときなどは、ペルソナが大切な指針になります。

ただし、ペルソナはあくまでも目安にとどめるべきかなと思います。私は上記の通り『コウ(仮)』さんという24歳の女性に向けた作品づくりをしていますが、現実にはそれ以外の多くの方にも見ていただけています。

それと、何でもかんでもペルソナに基づいてやろうとすると、どうしても窮屈な部分があります。明らかにペルソナに合わない作品でも『つくりたいからつくるんだ!』と強行することが結構ありますし、SkebやPixivリクエストではペルソナに合わないリクエストを頂くこともあります。

その辺りは、自分なりに趣味と実益のバランスを取ることが大切かと思います。